噂のトランス脂肪酸について改めて調べてみたら、想像以上の事実が判明!
今回はトランス脂肪酸について。
「狂った油」「食べるプラスチック」とまで言われてすっかり毒物扱いされるようになったトランス脂肪酸。
「今さらトランス脂肪酸?」と思われるかもしれませんが、意外となぜトランス脂肪酸が体に悪いのかを答えられる人は少ないのではないでしょうか。
さらには、海外と比べると今の日本のトランス脂肪酸への対策は非常に遅れています。
今回はそんなトランス脂肪酸についてイチからわかりやすくまとめてみました。
トランス脂肪酸について
どんな油?
トランス脂肪酸は油の種類を指し、自然界にはほとんど存在しない油です。つまり人工的に合成されたもの。
どうやってできるのかというと、「水素添加」といって、植物油などの液体の油に水素を添加することによって固形化する際に発生します。
水素添加によって作られる油脂にはマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどがあり、これらを使って製造されるパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子や業務用の揚げ油などにトランス脂肪酸は含まれているというわけです。
どんな作用をするの?
トランス脂肪酸は体にとってさまざまな害をもたらすことがわかっています。
まず一つはLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増やし、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らします。
これによって動脈硬化や虚血性心疾患(心筋梗塞など)のリスクが高まります。
さらには、肥満、アレルギー性疾患(喘息、アレルギー性鼻炎)についても関連性が認められており、なんと妊産婦・胎児への影響(胎児の体重減少、流産など)についても報告がされています(参考:「食品に含まれるトランス脂肪酸」 – 食品安全委員会)。
つまり、トランス脂肪酸をとっても一つも体にいいことはないということです。
諸外国での対応
このトランス脂肪酸の害に対して海外では10年ほど前からいち早く対策がされています。
デンマーク、スイス、オーストリアでは100g当たり2g以上のトランス脂肪酸を含む油脂の国内流通を禁止しているほか、ニューヨークでは飲食店でトランス脂肪酸を含んだ食品の提供に対して規制があります。
さらに、食品中にいくらトランス脂肪酸が含まれているかを表示する義務がある国はアメリカ、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、中国、台湾、韓国など、多くの国で何らかの対策が取られていることがわかります。
日本国の対応
では日本ではトランス脂肪酸についてどんな対策がとられているかというと……実は何の規制も対策もされていません。
信じられませんが、本当に国として何の対策もしていないのです。
国は「食品事業者による自主的な努力」をしてくださいね〜と完全に民間任せです。
なぜ国は何もしないの??と思われるかもしれませんが、国としては「日本人は欧米人ほど油の摂取量が多くないから問題なし」という言い分です。
確かに2008年の農林水産省の調査では日本人の平均トランス脂肪酸摂取量は一日あたり0.92〜0.96グラムであり、国際機関が発表している基準(日本人の場合一日2グラム未満)に照らし合わせるとセーフで問題なさそうに見えますが、これはあくまで”平均”であって、オーバーしている人はいるはずです。
内閣府の機関である食品安全委員会の報告書をよ〜〜〜く読んでみると次のように記載がありました。
ただし、脂質に偏った食事をしている人は、留意する必要あり。
「食品に含まれるトランス脂肪酸」 – 食品安全委員会
留意はする必要があるみたいです!
しかし、お店で売られているもの、出されているものにどれだけトランス脂肪酸が入っているのかも知ることができない今の状況でどうやって留意すればいいのでしょうか。。
本当に大丈夫?
さきほど、「食品事業者による自主的な努力」とありましたが、確かに努力している企業はあります。
従来よりも提供する食品中のトランス脂肪酸を削減しました!という取り組みをしている会社もあるのです。
そして、食品のパッケージにはトランス脂肪酸の含有量が記載されていなくても、ホームページ上にきちんとトランス脂肪酸量を載せている会社もあります。
今回、僕もとある大手パンメーカーのホームページにパンに含まれるトランス脂肪酸の量が掲載されているのを見つけました。
「なんだ、ちゃんと企業側も努力しているじゃないか」と思って、ざっと含有量に目を通していて愕然としました。
一例をご紹介します。
メロンパン(1個)・・・1.1グラム
スティックパン(9本入り)・・・0.4グラム(1本)×9本=3.6グラム
カスタードデニッシュパン・・・1.1グラム
オールドファッションドーナツ(チョコ)・・・1.4グラム
ケーキドーナツ(4個入り)・・・0.7グラム(1個)×4個=2.8グラム
「栄養成分表」 – 某パンメーカーホームページ
あれ?
さっきの国の調査では日本人の平均的なトランス脂肪酸摂取量って一日1グラムもなかったという結果でした。
しかし、これを見ると、菓子パン一つ食べたらアウトです。
しかもトランス脂肪酸は菓子パンだけじゃなくてたとえば業務用の揚げ油などにも含まれているので、他の食事でも体内に入ってきます。
ちなみにさっきあげた菓子パンの業者って日本を代表するような大手の企業です。
今回初めて詳しく調べて自分の目で見てみて愕然としました。
まさかこれほどまでトランス脂肪酸が多く含まれているとは……。
結局自分の身は自分で守るしかない
残念ですが、今回ご紹介したのが今の現状です。
私たち一人ひとりが知識をつけて体に害をもたらす食べものを摂り過ぎない(ゼロにするのは無理です)ようにするのと、摂ってしまったものを定期的にデトックスする習慣(ファスティング)を身につけるしかないです。
日本の食育に関する法律「食育基本法」にもこうあります。
様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている。
食育基本法 前文
そうなんです、国にも企業にも任せてられません。私たちが能動的に”食を選択する力”をつけることを国も期待しているということです。
賢くならないと病気になる時代です。ぜひ、一生涯使える食を選択する力、知識を身につけていきましょう!
【 追記(2015年6月19日) 】
2015年6月17日のニュースで「2018年までにアメリカでトランス脂肪酸を全面排除する」ことが決定したというニュースが飛び込んできました。
アメリカはこれによって年間の心臓発作による死者が数千人規模で減少すると見込んでいるとのこと。
日本もこのアメリカの動きを受けて何か対策の一歩を始めてほしいと切に願うばかりです。
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