栄養士も知らない?アメリカに和食が認められた驚きのマクガバンレポートとは

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こんにちは。管理栄養士の圓尾(まるお)です。

(初めての方は、こちらからどうぞ

 

最近、なかなかブログまで手が回っていないのですが、

少しまとまった時間が取れたので、書きたかったネタを書きたいと思います。

 

今回取り上げるのは「マクガバンレポート」です。

この名前を聞いたことがあるでしょうか。

 

栄養の専門家としてはぜひとも知っておきたい内容なのですが、

僕は社会人になってしばらく経つまでこのレポートの存在を聞いたことすらありませんでした。

 

というのも、学校では習わないからです(今はどうかわかりませんが)。

こちらのレポート、専門家はもちろん、そうでない方にもぜひぜひ知ってほしい内容です。

 

そこで今回は、このマクガバンレポートについてわかりやすくご紹介をしていきたいと思います。

 

 

栄養士も知らない驚きのマクガバンレポート 和食がアメリカに認められた日

マクガバンレポートって何?

マクガバンレポートは、1977年にアメリカ政府が発表した公式文書です。

 

内容は、当時アメリカで蔓延していた心臓病をはじめとする疾患(今で言う生活習慣病)の原因を分析したもの。

 

このレポートの特徴は何と言っても、莫大なお金と人員がかけられていることで、

当時のお金で数千万ドル、そして研究者や科学者3000人を使って徹底的に調べ上げています。

 

七年にも及んだとされるこの調査の結果できたレポートは、なんと5000ページにも及びます。

まずは内容に触れる前に、なぜアメリカがここまでしてこの調査をしたのかという背景をお話しましょう。

 

心臓病の増加で財政難に陥っていた

1970年代のアメリカは、まさに世界の覇者としてその栄光をほしいままにしていました。

当時のソ連に先んじて、人類初の月面着陸も果たし、その科学技術の権勢は強固なものでした。

 

しかし、そんなアメリカが頭を悩ませていたことが一つありました。

それが、増加し続ける心臓病です。

 

当時のアメリカの死因の第一位は心臓病で、働き盛りの中年層がバタバタと心臓病で亡くなっていました。

 

それに伴い、医療費も膨張を続け、国の財政を圧迫するまでになっていました。

 

当時のニクソン大統領は「これは何とかしないとまずい」と医療の世界でも革新へと乗り出すのでした。

 

この状況は医療では太刀打ちできない

まずアメリカが行ったのが治療技術の改善です。

当時の科学、医療の技術をさらに高めるため、投資をします。

 

しかし、一向に成果が上がることはありませんでした。

そんな追い込まれたアメリカが立ち上げたのが「栄養問題特別委員会」です。

 

マクガバンという、当時の時期大統領候補の呼び声も高かった大物を委員長に据え、

マクガバンレポートの作成を命じます。

 

アメリカが増加の一途をたどる生活習慣病に歯止めをかけるべく、本気を出したのがマクガバンレポートです。

 

では、次でいよいよその内容をつまびらかにしていきましょう。

 

マクガバンレポートの驚きの内容とは

病気は食事によっても引き起こされる

今でさえ、食べ過ぎや栄養の偏りが病気を誘発することは常識になっています。

しかし、当時の世界では病気は病原菌が引き起こすものだとされていました。

 

そんな常識に風穴を開けたのがこのマクガバンレポートです。

 

マクガバンレポートは、世界で初めて「病気は食事や栄養の偏りによっても引き起こされる」と認めた公式文書だとされています。

 

このレポートの中では、世界中に調査員を派遣し、

食生活と健康状態の関係を徹底的に調査しています。

 

最も理想的な食事は日本の食事である

このレポートの中では、世界でもっとも健康的で理想的な食事についても記載があります。

それがなんと、他でもない私たち日本の食生活なのです。

 

これをきっかけに、アメリカでは和食ブームが起きたり、

和食をもとにしたマクロビオティックがアメリカで流行るのもこの後です。

 

しかし、ここで誤解してはいけないのは、

ここで言われている和食とは、現代の日本の食生活のことを指しているわけではありません

 

このレポートの中では「元禄時代以前の日本人の食事」と書かれているのです。

 

まず、過去にさかのぼってまで、よく調べたな…と驚くのですが、

なぜ元禄時代以前なのでしょうか。

 

白米を常食するようになった江戸時代

元禄時代とは、1688〜1704年にあたり、

井原西鶴や松尾芭蕉が活躍したり、赤穂浪士が討ち入りを果たした頃です。

 

マクガバンレポートによると、この頃の日本人の食生活は

精白しない穀類を主食とし、季節の野菜や海藻類、それに小さな魚介類を摂っていた」とあります。

 

そう、江戸時代も後期になると精米技術が向上し、都市部では白米を食べるのが多くなります。

その結果、ビタミンB1不足が起き、江戸患い(今でいう脚気)にかかる人が増えます。

 

ちなみに、これは明治時代の日清・日露戦争の時まで解決することなく日本人を悩ませます。

 

精米することにより、糠や胚芽に含まれていたビタミン、ミネラル、食物繊維などが削ぎ落とされてしまいました

なので、マクガバンレポートではそれ以前の日本人の食事が良いと書かれているのです。

 

医師に栄養教育を強化

さらにアメリカがスゴかったのは、これを受けて医師に栄養学の教育を施すことを強化させます。

 

当時のアメリカでは医師に対して栄養学はほとんど教えられておらず、

医療の主役である医師が、栄養学の知識を持ち合わせていないという状況がありました。

 

しかし、マクガバンレポートで食の重要性が浮き彫りになったため、医師へも栄養学を教えようという流れになったのです。

 

これにより、アメリカでは医師も栄養学をきちんと勉強するようになったため、

世界の中でも予防医学が進んだ国へと変身していきます

 

ちなみに、日本では今でも医師へはほとんど栄養学は教えられていないようで、

僕が病院で働いている時も、栄養について勉強している医師は稀でした。

 

おまけの後日談…

ちなみに、マクガバン上院議員はマクガバンレポートを発表後にその続編となる「第二のマクガバンレポート」なるものを発表しようとしますが、

その中で「肉食はガンを引き起こす」と報告したため、食肉業界や畜産業界から強烈な圧力をかけられます

 

挙句には、これが原因で大統領になることができなかったと言われています。

業界の圧力は恐ろしいものですね。

 

まとめ

皮肉なのは、当の日本では戦後一気に食の欧米化が進み、

マクガバンレポートで褒めちぎられていた食生活とは程遠い食生活を送っているということです。

 

戦後の食糧難を救ってくれたとはいえ、パンを食べるように仕組まれたという見方もできる悲しい過去です。

 

このマクガバンレポートが栄養士の教育の教科書に載れば、もっと日本の伝統食に注目する栄養士が増えて日本の食事も良さを取り戻すのではないかと思うのですが。

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