書評 「新農薬ネオニコチノイドが日本を脅かす」 水野玲子

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「ネオニコチノイド」

その言葉を初めて聞いたのは、2年ほど前になんとなく参加した、とあるハチミツのイベントでのことでした。

 

「農薬によってミツバチが大量死している」

最初その話を聞いた時は、「まあ害虫を殺すための農薬だから多少は死ぬんだろうな」と思っていたのですが、その養蜂家の話を聞くに連れて事態の深刻さに背筋が寒くなりました。

 

それから時が経ち、ファスティングを広める活動をする中で”農薬”というテーマは避けて通れないトピックになりました。

そこで手にとったのが本書です。

 

早速紹介していきましょう。

 

 

新農薬 ネオニコチノイドが日本を脅かす

地球の胃袋はミツバチに支えられている

ミツバチは野菜や果物などの受粉の助けをして、作物を結実させるポリネーター(花粉媒介者)だ。目にみえない彼らの働きのお蔭で、スーパーに行けばいつでもミカンやイチゴを私たちは入手できる。

(本書 P. 24より)

 

ミツバチと聞くと、たいていの人が思い浮かべる人間にとっての価値といえば、ハチミツを作ってくれることではないでしょうか。

しかし、実はミツバチたちは花から花へと飛び移り、花粉を集める時に野菜や果物の受粉という非常に大事な役目を果たしています。

 

そんなミツバチですが、最近、日本を含めた世界中で「CCD(蜂群崩壊症候群)」と呼ばれる、大量死するという現象が起きています。

この現象は1990年代半ばからヨーロッパで確認され、国連食糧農業機構(FAO)の2009年の調査によると、ミツバチは1961年〜2007年の間に北米で約50%、ヨーロッパで約25%も減少したことがわかっています。

日本でも、毎年少なくとも約2億匹のミツバチが姿を消していると言われています。

 

新農薬ネオニコチノイドがミツバチ大量死の原因

ミツバチの免疫力を低下させて、病気に対する抵抗力を奪ってしまう新農薬にこそ、本当の原因があったのだ。

(本書 P. 83)

 

そんな世界中でミツバチが大量死するという不可解な現象の原因になっていると考えられているものが、”ネオニコチノイド系”と呼ばれる農薬です。

 

このネオニコチノイド系農薬は、70年〜80年代に主流だった有機リン系農薬に代わり、90年代に登場した新しい農薬で、「有機リン系よりよく効く」ということで瞬く間に世界の農薬マーケットを席巻しました。

しかし、2011年1月20日にイギリスの新聞社によって、アメリカの農務省のミツバチ研究所らが「ネオニコチノイド系農薬であるイミダクロプリドがミツバチの病気への抵抗力を大幅に低下させる」という2年前の研究結果を隠蔽していたことが暴露され、事態は明るみになります。

 

その後、フランスがいち早く再実験を行い、あらためてネオニコチノイド系農薬がミツバチに対して深刻な害をもたらすことを検証することに成功します。

この検証結果は世界に衝撃を与え、波紋が広がります。EUでは2013年2月にネオニコチノイド農薬の使用中止を勧告、アメリカも2015年4月にネオニコチノイド系農薬の新規使用を禁止するなど続々と規制強化の流れが起きています。

(参考:  「ミツバチ大量死の原因?米で一部農薬の新規使用禁止」 – 朝日新聞

 

「世界中」という言葉を使いましたが、世界の流れとは逆の流れが起きている国があります。

そう、ここ日本です。

 

封印される農薬説、日本

世界ではネオニコチノイド系農薬がミツバチの大量死の原因であり、規制すべきだというのが当たり前なのですが、日本ではこの”農薬説”が認められていません。

日本の専門家は「ミツバチ大量死の原因は、ストレス、地球温暖化、栄養失調、ウイルスなど、さまざまな要因が絡み合っており、農薬はその中の一つの原因でしかない。よって農薬を規制したところでミツバチ大量死はなくならない」との姿勢を崩していません。

 

そしてなんと信じられないことに、世界では使用禁止の流れに動いているネオニコチノイド系農薬は2015年4月に規制が緩和されました。

(参考:  「厚労省、ネオニコチノイド系農薬の食品残留基準を緩和」 – Yahoo!ニュース)

 

「農薬」というと中国の冷凍ギョウザの事件や、アメリカの農地で飛行機による農薬散布の映像などが焼き付いており、なんとなく日本は海外に比べると安全というイメージがあります。

しかし、日本は最近まで世界一の農薬使用大国でした(現在は2008年に韓国に抜かれて二位)。

実は日本の農業では世界トップクラスの量の農薬が使われ、私たちはそれを知らず知らずのうちに、せっせと摂取しているのです。

 

 

まとめ

この本で驚いたのはなんといっても海外と日本の農薬に対しての対応の違いです。

フランスなどではネオニコチノイドの規制にあたり、逆に有機農業を行う農地面積を3倍に増やすなどの目標を設定し、国を上げて地球と人間に優しい農業へと改善に動いているのです。

 

そして何より危惧すべきはこういった状況について僕たち日本人のほとんどはまったく知らないということです。

本書に記載がありますが、農薬の問題は決してミツバチだけに留まる話ではなく、人間の健康状態にも害を及ぼすのです。ハチごとでは済まされません。

 

食や健康について伝える立場の栄養士も農薬についての知識は必須だと痛感しましたし、これからももっともっと勉強していってこういった情報をたくさんの人に伝えていかないとという思いを強くした一冊でした。

 

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