こんな日はたんぱく質について語ろうか
こんにちは。
管理栄養士の圓尾(まるお)です。
今日は雨です。台風が近づいています。こんな日はたんぱく質について語りましょう。そうしましょう。
こんな日はたんぱく質について語ろうか
人間の身体は何でできている?
さて、たんぱく質ですが、英語では”Protien“と言います。
この語源は古代ギリシア語の“Proteios“から来ていて、その意味は「第一なるもの、主要なもの」です。
なぜ語源から紹介したかというと、我々人間にとっていかにたんぱく質が重要かということを強調したかったからです。
そのことを何千年も前の古代ギリシア人がすでに気づいていたことには本当に驚きます。
さて、では人間にとってなぜたんぱく質が大事なのでしょうか。
それは、たんぱく質は人間の体を構成している主要成分だからです。
一度自分の体を見て触ってみてください。
人間を作っているのは体と心ですが、心を除いたこの物体としての身体は何でできているでしょうか?
構成成分としてもっとも多くを占めているのが水分です。これが約60%.
赤ちゃんの頃が一番みずみずしく、高齢になると水分が減ってしわしわになっていきます。
そして次に多いのがたんぱく質です。約20%.
以下、脂肪、炭水化物、核酸、ミネラルと続きます。
このようにたんぱく質は人間の体の主要成分において、水の次に多いものです(人によっては脂肪のほうが上回っている人もいるかもしれませんが…)。
人間を脱水してカラカラにしたら半分以上はたんぱく質です。
肉=たんぱく質という幻想
このたんぱく質が体を作っています。
皮膚も、肌も、髪の毛も爪も、内蔵や筋肉、骨もたんぱく質でできています。
さらに目には見えない酵素やホルモンといった、ヒトが生きていく上で欠かせないものもたんぱく質が材料となっています。
そして私たちはこのたんぱく質を食事という形で補給しています。
一日にどれぐらいたんぱく質をとるべきか、というのは国の機関である厚生労働省によって決められています。
それが、成人の男性は60g、女性が50g. これぐらいとっていればまあ不足しないよという量です。
ただし、運動不足の場合と激しい運動をしている場合はたんぱく質の必要量が増えることが分かっています。
運動をしなさすぎたり運動をしすぎると、体が必要とするたんぱく質量が増えます。
運動不足の人は適度な運動を心がけて、アスリートは不足しないようにたんぱく質を摂取する必要がありそうです。
さて、前述のたんぱく質、男性が60g、女性が50gということでしたが、これを食べ物でとるとすればどれぐらいの量なのでしょうか。
世間一般的なイメージとして「たんぱく質」といえばまず挙がってくる食材が「肉」ですよね。
とにかく肉はたんぱく質の塊というイメージを持っている人も多いと思います。
たとえば牛肉、だいたい一般的な炒めもの一食分の牛肉に含まれるたんぱく質の量は、6gほどです。
牛肉チェーン店の並盛りの牛肉の量では、たんぱく質は8gほど。
この時点で分かると思いますが、肉だけでたんぱく質を60gとろうと思ったらかなり大変です。
牛丼7杯分の牛肉を食べてもまだ足りません。
実際肉には水分が多いので、決してたんぱく質の塊ではありません。
牛肉よりもっとたんぱく質の塊感のある鶏肉のささみ。
こちらになると一本で約15g. やっぱりスゴい、これはなかなかの量です。
ちなみに他の食材も紹介しておくと、卵が一個当たり約7g、さばが一切れで16g、納豆がひとパックで約8g、木綿豆腐が1/2丁で約11gです。
表にまとめてみましょう。
食材 | 量 | たんぱく質量(g) |
牛肉 | 60g | 6 |
鶏肉ささみ | 一本 | 15 |
卵 | 一個 | 7 |
さば | 一切れ | 16 |
納豆 | ひとパック | 8 |
木綿豆腐 | 1/2丁 | 11 |
こうしてみると、決して肉=たんぱく質ではなく、他にもたんぱく質が豊富な食材がたくさんあることが分かります。
一般的にはたんぱく質といえば「肉」「魚」「卵」「乳製品」「大豆製品」と言われますが、実はそれ以外の食材にもたんぱく質は含まれていて、
たとえばお茶碗一杯のごはんには4gのたんぱく質が含まれていますし、しいたけ100gにも3gのたんぱく質が含まれています。
たんぱく質の質が違うので、一概に量だけでは比較できない部分もありますが、少なくとも「たんぱく質=肉」ではないということをぜひ覚えておいてください。
なにせ、肉を食べることはリスクをはらんでいます。詳しく知りたい方は下記記事をご参考に。
たんぱく質は本当に一日60g必要?
さて、普通の栄養士であればここで
「はい、このようにたんぱく質は非常に重要なものなので、男性の方は一日60g、女性の方は50gとれるように食事を考えましょう〜」
と終わると思うのですが、僕は普通ではないのでこっから異説を唱えます。
そもそも、たんぱく質ってホントに一日60gも必要なの?
こんな話があります。
インドネシアの東にパプアニューギニアという国があります。
そこの住んでいる民族の食事はタロイモやヤムイモなどの芋類が中心で、一日に1キロ以上食べるそうです。
食生活のほとんどが芋で、一日三食芋しか食べない日もあるほど。
で、この食事でとれるたんぱく質量なのですが、おろどきの一日わずか15gです。
日本の基準で考えると、必要な量に全然達していません。
となると当然パプアニューギニアに人々はたんぱく質が足りないことによる栄養失調で病気になったりガリガリになっているのかと思いきや、そんなことはなく、
むしろ日本人よりもがっしりした体格をしている人もいるのです。
ではなぜパプアニューギニアの人たちはたんぱく質摂取量が極端に少ないにもかかわらず、健康を保てているのでしょうか。
一つの説として考えられているのが、腸内細菌がたんぱく質の原料となるアミノ酸を作り出しているというものです。
彼らの糞便中の窒素量(たんぱく質の量を示す指標として使われる)を測ると、食べた芋に含まれる窒素量の約二倍を示しました。
入り口からは「1」しか入れていないのに、出口から「2」出てきたということです。
これは、腸内細菌によって本来は老廃物として処理されるはずのアンモニアからたんぱく質の原料を作り出しているのではないかと考えられています。
まあざっくり言うと、あんまりたんぱく質摂取量が少ないもんだから何とかしようということで、腸内細菌が頑張ってゴミとして捨てていたものをリサイクルできる仕組みを作った、という具合です。
「なるほど、まあパプアニューギニアの人は特殊な食生活をしていたから体がそう適応したのだろう」と思った人、ちょっと待ってください。
これを日本人に当てはめて考えてみましょう。
前の記事でも書きましたが、日本人は戦後高度経済成長に入るまでは、いまほど肉を食べていませんでした。
それまでの食事というのはとにかくごはんを山盛り食べて少しのおかずです。
日本人の体はお米と大豆でできていたのです。
あながちパプアニューギニアの人を私たちとは違う、特別だと考えることもできないのです。
おそらくその頃の日本人のたんぱく質摂取量を測定すると、いまで考えると栄養失調状態でしょう。
しかし、腸内細菌が頑張って健康を保ってくれていたのだと思います。
ただもちろん、その頃の食事がすべて健康的に100点満点かというとそうではありません。
僕が言いたいのはたんぱく質60gを毎日欠かさずしっかりとることが別にいいとは思わないということです。
少なくとも僕個人的にはたんぱく質の量なんて気にしてないですし、朝食も果物など簡単なものしかとらないので、おそらく一日60gもとっていないと思いますが、それでも全然健康ですし、むしろ前より筋肉量が増えています。
たんぱく質はたしかに大事です。
しかし、だからといってそれに固執するあまり質の良くない肉を意識してとるようなことは少なくともやめるべきだと思います。
それよりも魚、大豆製品、そしてしっかりお米を食べる生活を心がけましょう。
たんぱく質と上手に付き合おう
ということで、今回はたんぱく質について書いてみました。
こうして一つの栄養素について掘り下げていくと、他のいろんな事柄と関連してくるからおもしろいですね。
本当はもっとたんぱく質について書きたいこともあるのですが、3000字を超えて皆さんもお疲れだと思うのでこのあたりで。
また次回の記事をお楽しみに。