一粒に込められた栄養素の数々 梅干しがもつ力とは?
こんにちは。管理栄養士の圓尾です。
皆さんは、梅干しってお好きですか?
あの独特の酸っぱさが好みの分かれるところですよね。
ちなみに、僕は子どもの頃から酸っぱいものが苦手だったので、ずっと嫌いで、
お弁当とかに入っていても残していたのですが、梅干しがもつ力を知ってからは常備して食べるようにしています。
苦手な方も、知識を得ることで食べたくなるかも?
というわけで、今回は梅干しについてお伝えしていきます!
梅干しについて
古くから薬効が認められていた
日本人は梅干しを千年以上前から食べていたようです。
それも、ただの食べものとしてではなく、病を治す薬として大事にされていたようで、
丹波康頼という医師が、平安時代の984年書いた日本最古の医学書「医心方」にも、梅干しの薬効が紹介されています。
その後、戦国時代にも傷の消毒や食中毒、伝染病の予防の陣中食として重用され、
武将たちも梅の植林を奨励したとあります。
梅干しの栄養成分
梅干しの特徴的な栄養成分が、あの酸味のもとの有機酸というもの。
この有機酸はいろんな酸の総称で、
クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、ピクリン酸、カテキン酸、コハク酸、酒石酸など、
たくさんの種類の酸が含まれています。
この種々の有機酸が身体にとって、いろいろな良い作用をもたらすのです。
たとえば、クエン酸は体内のエネルギーを生み出す回路を円滑にしてくれて、疲労回復の効果が期待できます。
さらには、酸味が唾液や胃液の分泌を促し、消化を促してくれます。
また、有機酸は腸内にも働きかけ、善玉菌にとって心地よい環境を作り出し、腸内環境の改善にも一役買ってくれます。
さらに、有機酸にはカルシウムや鉄分など、不足しがちなミネラルの吸収を促進してくれるという働きも。
鉄分は、レバーや肉に含まれるヘム鉄はまだ吸収が良いのですが、
野菜や海藻に含まれる非ヘム鉄は吸収が良くありません。
しかし、この非ヘム鉄も有機酸と一緒にとることで吸収率が向上するので、
梅干しは、長らく肉を食べてこなかった日本人の鉄分補給を支えていた面もあったのかもしれません。
まさに、先人の知恵ですね。
塩分が心配?
梅干しというと、気になるのが塩分という方も多いです。
実際、梅干しは塩分濃度が高く、伝統的な製法で作られた梅干しは20%ほどの塩分濃度ですので、
大粒(20g)の梅干しですと、一粒で4g以上の塩分が含まれます。
厚生労働省が作成した、2015年版の食事摂取基準によると、
一日の塩分目標量は男性が9.0g未満、女性が7.5g未満。
高血圧の予防や治療を目的とした場合は6.0g未満とされています。
この数字だけ見ると、梅干しの塩分量は非常に多いとなるのですが、
だからといって梅干しを食べないのはもったいないと僕は思います。
少し話はズレますが、
栄養学って、いろいろ研究がされて、
この食品にはどんな栄養素が含まれていて、それがどんな働きをしてるのかってことがわかってきたのですが、
とは言え、まだまだわかっていないことが多いです。
その発展途上の栄養学だけを根拠に食べるものを選ぶより、
何百年と前から日本人が築いてきた、身体で証明された栄養学にも目を向けた方が良いように思うのです。
おそらく、梅干しだって、今わかっている栄養成分や効能以上のものが含まれているはず。
で、話を戻すと、
梅干しに塩分が多いことは事実で、
塩分のとりすぎが身体に良くないことは変わりないので、
食べる時は一日一粒にした方が良いです。
あとは、それ以外の食事で塩分をとりすぎないこと。
特に外食やインスタント食品、加工品は塩分が多いものがたくさんありますし、
食卓塩に精製塩を使っている人も多いでしょう。
とりすぎた塩分を外に出してくれるカリウムを含む野菜や果物を食べることも大事。
すでに普段の食事で塩分をたくさんとっている人は、
今の食生活に梅干しを加えるのではなく、
他での塩分摂取量を減らした上で梅干しを食べた方が健康にとっては良いと思います。
梅干し風の食べものに注意
スーパーなどで売られている梅干しをよ〜く見ると、
「調味梅干」と表示のあるものがほとんどです。
これは、梅干しの塩分濃度を下げて、化学調味料で味付けをしたもので、
原材料の欄を見ると、「梅」と「食塩」以外にいろんな添加物が記載されています。
こういった食品添加物は、原材料に遺伝子組換え作物を使用していたり、
安全基準はあるものの、その害については不明確な部分も多いので、なるべく避けたいものです。
ただ、普通の梅干しの味に慣れている人は、本物の梅干しを食べるとその味にビックリするかもしれません。
塩辛さも酸っぱさも、本物の梅干しは濃い〜です。
でも、これが日本人が長らく食してきた伝統的な味。
食べていると、慣れてきます。
ということで、今回は梅干しについて書いてみました。
五〜六月に出回る梅を手に入れれば、自宅でも梅干しが作れます。
ちゃんと作れば梅干しはものすごく日持ちがして、百年たっても食べられるそうです。
奈良には1576年に作られた梅干しが残っているとか。
自宅で大量に作って、残しておき、孫に食べさせるなんてのも楽しいかもしれませんね。
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