8人に1人が該当 糖質制限ダイエットの危険性 腎機能低下につながる恐れあり
こんにちは。
糖質制限ダイエットに警鐘を鳴らす管理栄養士の圓尾(まるお)です。
前回の記事にかなりの反響をいただきました。
糖質制限ダイエットに関して「本当のところはどうなの?」と気になっている方が多いようです。
僕の中ではすでに終わった食事法なのですが、
世の中的にはまだまだ実践している人が多く、ブームを通り越して定着した感じすらあります。
今回の記事でも糖質制限ダイエットの危険性を、
前回ご紹介した食物繊維不足につながること以外の角度から述べてみたいと思います。
8人に1人が該当 糖質制限ダイエットの危険性 腎機能低下につながる恐れあり
人間がエネルギーにしている3つの栄養素
まず、栄養学の基礎的な知識の確認からお付き合いください。
人間は食べものを食べ、そこから生きる糧であるカロリーを得ています。
歩いたり運動をしたりして体を動かすためにもカロリー(エネルギー)は必要ですし、
体を動かしていなくても、ボーッと寝ているだけでも脳も働いていれば、心臓を動かしたり呼吸をしたりしているので、やはりカロリーが必要です。
で、食べものの中のどの成分からエネルギーを得ているかというと、3つしかありません。
それが、「糖質」「たんぱく質」「脂質」。この3つです。
これを三大栄養素といいます。
で、この中でたんぱく質だけが持っている特徴があります。
それは、構造の中に窒素が含まれていることです。
このたんぱく質には窒素が含まれているということが後でも出てきますので、覚えておいてください。
多くのエネルギーを糖質に頼っている
さて、人間は「糖質」「たんぱく質」「脂質」の3つからエネルギーを得ているわけですが、
どの栄養素からどれぐらいエネルギーを得ているのか、という割合のことをPFC比率といいます。
このPFCとは、Protein(たんぱく質)のP、Fat(脂質)のF、Carbohydrate(炭水化物)の頭文字です。
(炭水化物と糖質では意味するところが異なりますが、ここでは便宜上同じものと考えてもらって構いません)
そして平均的な日本人の場合、このPFC比率は現在、
P: 15%、F: 25%、C: 60% となっています。
つまり、一日に摂取するエネルギーのうち、僕たちはその15%をたんぱく質で、25%を脂質で、60%を糖質でまかなっているわけです。
かなりの部分を糖質に頼っており、たんぱく質はそれに比べると随分少ないのが分かります。
なので、仮に糖質制限をして同じだけのカロリーを得ようとすると、
必然的にたんぱく質と脂質の摂取量を増やして糖質の穴埋めをすることになります。
そしてこのことが大きな問題を生んでしまうのです。
高タンパク質食によって腎機能が低下する
それが、次の問題です。
高タンパク質食は、腎機能の低下と明らかな関連がみられた。
(ハーバード大学が実施した女性1624人を対象にしたNurse’s Health Studyより)
糖質を減らすと、必然的にたんぱく質の摂取量が増え、高タンパク質食になります。
そしてそのことにより、腎機能の低下が引き起こされたというのです。
腎臓といえば、肝臓と並んで”肝腎要(かんじんかなめ)“と表現されるように、まさに体にとって要となる重要な場所。
腎臓はいわばフィルターが入ったろ過装置。汚れた血液を綺麗にしてくれるところです。
もし腎臓の機能が失われて機能しなくなると、人工透析といって、腕の血管に管を通し、一度血液を体外に出して人工的な機械のフィルターでろ過して再び体内に戻すという治療を一生受け続けないと死んでしまいます。
腎機能が低下してしまうというのはとんでもないデメリットです。
たんぱく質は窒素を出し、腎臓を痛めつける
ではどうしてたんぱく質を多くとると腎臓の機能が低下してしまうのでしょうか。
これには、冒頭で触れた、人間がエネルギー源としている三大栄養素の中でたんぱく質だけが持っている特徴が関係しています。
そう、構造の中に窒素が含まれていることでした。
たんぱく質を燃やしてエネルギーに変えたとき、体はこの窒素の処理にわずらわされるのです。
これが腎臓に余計な負担をかけることにより、腎機能が低下しているのではないかと考えられます。
それに対して糖質や脂質はクリーンな栄養素なので、燃やしても余計なゴミが出ません。
たとえるならたんぱく質はガソリン車のようなもので、走ると二酸化炭素を排出して環境を破壊しますが、
糖質や脂質は電気自動車のように、走っても空気を汚さないという具合です。
その中でも糖質はもっとも優良なエネルギー源であることを人体の構造が物語っています。
体内には「糖質」「たんぱく質」「脂質」をそれぞれ消化して分解し、エネルギーを生み出せるような形に変えるための消化酵素が別々に存在しています。
そのうち、糖質を分解する消化酵素であるアミラーゼは唾液の中に含まれています。
他のたんぱく質や脂質を分解する酵素は胃に入ったあと、胃や腸の中で初めて分泌されます。
つまり、人間の体は糖質だけは口に食べものが入ったその瞬間から真っ先に消化分解して、一刻も早くエネルギーに変えるための仕組みが備わっているのです。
それほど糖質は効率の良いエネルギー源であり、すぐに利用できる優れた栄養素であると言えます。
意外に多い慢性腎臓病患者
「高タンパク質食によって腎機能が低下する」という結果を紹介しましたが、一つ付け加えることがあります。
それは、腎機能が低下したのは、「すでに腎機能が低下していた人に限っていた」ということです。
もとから腎機能に問題がなく、正常な人は高タンパク質食をとっても腎機能に影響がありませんでした。
こう聞くと、「な〜んだ。じゃあ健康な人は別にたんぱく質を多くとっても問題がないのではないか」と思うかもしれませんが、
腎機能が低下している人は、実はものすごく多いのです。
その数は1330万人いるとされ、成人の8人に1人はCKD(慢性腎臓病)という状態に陥っていることがわかっています(出典:日本腎臓学会 CKD診療ガイド2012)。
これはすでに腎臓の病気と診断されるレベルの人がこれだけいるということなので、そこまでいかなくても腎機能が低下気味の人までいれるともっと多い数になるかと思います。
そして腎機能というのは少しぐらい低下しても、さしたる自覚症状としては現れないので気がつきません。
さらに進行して腎不全にまで至ると、腎臓移植以外の回復は不可能になります。取り返しがつきません。
果たして、糖質制限ダイエットを実践している人の中で、実践する前に腎機能の検査を受けている人がどれだけいるでしょうか。
こういうことを考えないまま、安易に糖質を制限してその分肉、卵、乳製品などで高タンパク質な食事をすることの危険性を知っておく必要があるでしょう。
ちなみに、もう一点だけ付け加えておくと、
高タンパク質食は腎機能を低下させたのですが、
同じたんぱく質でも腎機能に影響しなかったたんぱく質があります。
それが、大豆などに含まれる植物性のたんぱく質です。
なぜか植物性のたんぱく質だけはたくさんとっても腎機能を低下させるようなことはなかったといいます。不思議な話です。
そういうこともあって、僕は筋トレ後のプロテイン摂取には動物性のホエイプロテインではなく、
麻の実からとれるヘンププロテインを豆乳に溶いて飲むようにしています。
これでしたら腎臓に負担をかける心配がありません。
まとめ
今回は糖質制限ダイエットによってたんぱく質の摂取量が増えることにより、腎機能を損なうリスクがあることについてお話いたしました。
ここまでをちゃんと理解すると、糖質制限ダイエットがいかにリスクをはらんだ食事法であるかがハッキリと見えてきます。
皆さん、安心してモリモリごはんを食べましょう。
しかし、
「そういったリスクがあったとしても、手軽にしっかり痩せられる糖質制限ダイエットはやはり魅力的に思える」という方もいるかもしれません。
そこで次回は、果たして糖質制限ダイエットは他のダイエット法より痩せられるのか?ということについて書いてみたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。