食育で一番大切にしたいこと、伝えるべきこととは?
こんにちは。管理栄養士の圓尾です。
「食育」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
その言葉通り、「食べることに関する教育」で、日本には食育に関する法律(食育基本法)なるものまであります。
食育基本法には次のようにあります。
子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも「食」が重要である。
子どもたちが健やかに育ち、勉強をしたり、豊かな心を養ったり、スポーツを楽しむ上では食は何よりも重要な役割を担っています。
食育なくして教育なし。そう法律で言い切ったのが食育基本法なのです。
とは言え、現在の教育現場では食育に割ける時間は限られているところがほとんど。
今回はこの食育の中でも、特に重きを置いて伝えていかないといけないではないかと考えるものをお話します。
幅広い食育の中で特に大事にすべきものとは?
食育にもいろいろある
一言に「食育」といってもさまざまなものがあげられます。
たとえば「食べものに含まれる栄養素について」や、「朝ごはんを食べることの重要性」、「よく噛んで食事をとること」など、多岐にわたります。
その中で僕が一番大事にすべきでないかと考えているのがズバリ「食べものの生産について」です。
普段の食事で使われている野菜や魚などの食材から、味付けに使われる調味料まで。
これらがどんな人によってどんなふうに作られているのかを知ることこそ、もっとも大事にするべきことではないかと考えています。
次に、生産について学ぶことで起きる3つの効果をあげてみます。
1. 食べ物に対する興味が深まる
食の大切さの理解を深める上で、食べ物に対して興味を持つことは非常に重要です。
美味しい/不味いだけで食べものを選んでいると、誰しも砂糖、脂肪を求めるように人間はできています。
嗜好を満たすための食べものが溢れた現代で健康な体づくりを目指すには、栄養バランスが整った食事をとることが必要ですが、それには学習が欠かせません。
食べ物に興味をもつ入り口として、一番効果が大きいのが、食べ物がどのように作られているのかを知ることです。
野菜を栽培する農家さん、魚を獲る漁師さん、醤油を作る職人さん。
その人たち、その現場を知ることで、目の前のモノとして食べ物が一転、命をいただいているという認識に変わります。
その認識が変わることにより、食べるという行為に対しての重みが変わってくるのです。
2. 値段への理解が深まる
健康になる上ではどういう食べものを選択するのかが大事になってきます。
体のことを考えたら、やはりなるべく自然なものを選ぶ方が良い選択です。
しかし、大量生産、効率化が進んだ現代では、自然なものほど値が張ります。
この時、値段だけで商品を選ぶ価値観を持っていると、どうしても大量生産された安いものに手が伸びてしまいます。
生産の現場を知ることで値段の価値を知ることができます。
化学的な農薬や肥料を使わずに野菜を作ることがどれほど大変か。
手作業で昔ながらの製法で醤油を作ることが、どれだけてまひまがかかることなのか。
さらには、それを作っている人たちの想いが加わります。
そういったことを知ることで、次に自然的な製法で作られた製品を見た時の捉え方が変わります。
3. 本物の美味しさがわかるようになる
自然のものは美味しい。
その美味しさも学習によって知ることが可能になります。
てまひまがかけられて丁寧に作られたものは、本当の意味で美味しいのです。
この本当の美味しさを知ると、食の好みが変わります。
体に悪いとわかっていてもついつい食べてしまっていたものが、自然と欲しいと思わなくなります。
我慢などしなくとも、体が自然と正しいものを選ぶようになり、余計なものを欲しいと考えなくなるのです。
これこそ、本当の食育と言えるでしょう。
まとめ
現代社会では過去の人類史にないぐらい、生産と消費の現場が隔絶されてしまっています。
それによって消費者は、食べものをただのモノとしてしか認識できなくなっています。
食べものは、食品成分表に載っているの栄養素やカロリーで見ると、一本のにんじんはどこでどんなふうに作られようと、同じ一本のにんじんに過ぎませんが、生産者や農法が変われば決して同じにんじんになるはずがありません。
そういった一番本質的なことを教えて伝えていくことこそ、食育で真っ先に押さえておかないとならないことなのではないかと思います。
【 関連記事 】