書評「心療内科に行く前に食事を変えなさい」姫野友美

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「眠れない」「食欲がない」「一日中気分が落ち込んでいる」「何をやっても楽しめない」

そういった状態が続くうつ病。厚生労働省によると、日本人の100人に3〜7人はこれまでにうつ病を経験したことがあり、さらに近年うつ病の患者は急増しているとのデータがあります。

自覚していない人も多く、気がついた時には「会社に行きたくない」「朝起きれない」「朝になるとお腹が痛くなる」といった日常生活を送るのが困難になるというケースもあるので、注意が必要です。

 

今回紹介する本の著者は、そんなうつ病に代表されるようなさまざまな”心の病”に立ち向かってきた心療内科医師の姫野友美先生。現在では出版やテレビでも活躍されています。

そんな心療内科の専門医が書いたこの本のタイトルがシビれます。

 

 

この言葉に込められた思いとは何なのか。

早速紹介していきましょう。

 

 

心療内科に行く前に食事を変えなさい

栄養療法との劇的な出会い

「人間の体はすべて食べ物から取り込まれた栄養素から成り立っており、体内分子(栄養素)を本来あるべき正常な状態に整えることによって、自らの自然治癒力を高め、病気の進行を防ぎ、症状を改善し、さらには病気の予防もする」

これが分子整合栄養医学に基づいた栄養療法です。

本書 P.6より

 

姫野先生は10年前のある日、参加した勉強会で”分子整合栄養医学”と出会います。

これまでは薬を使ったり、カウンセリングをしたりといった方法でしか治療をしていなかった姫野先生にとって、栄養をとることによって治療をするという栄養療法はとても新鮮に映ったようです。

 

僕も500床ある総合病院で管理栄養士として勤務していたからよくわかるのですが、日本の医師のほとんどは栄養の重要性をまったく理解していません。

 

「●●先生、この患者さんの食事の種類を変更したいのですが…」

「あ?食事?なんでもいいよ。好きに変えといて。ガチャ!…ツー、ツー、ツー」

なんていう電話のやり取りをしたこともあります。人間の体は食べたもので作られているのだから、病気や怪我を治療する上で食べ物が重要でないわけがないのですが、それがまったく認識されていませんでした。

 

出てくる症状に対して個別にアプローチするという、いわばもぐらたたきのような西洋医療に対して、分子整合栄養医学は人間の体を構成する細胞一つひとつにアプローチするという、根本療法にあたります。

僕が所属している分子整合医学美容食育協会もこの分子整合栄養医学にもとづいたファスティングの理論を学べる団体です。

 

心の問題は「脳」の中で起きている

「心の問題は心でなおす」と思うわけです。たしかに、疲れた心を休ませたり、リラックスさせることは大切ですが、残念ながら、それだけでは根本的にはよくなりません。なぜなら、心の元気の素は「脳」にあるからです。

本書 P.20、21

 

本書では具体的に食べ物がどう心に影響しているかをわかりやすく解説しています。

 

僕たちの心、感情は脳で作られており、それは神経伝達物質(脳内ホルモン)のやり取りで起きています。

「快感ホルモン」のドーパミンや「ハッピーホルモン」のセロトニン、「緊張ホルモン」のノルアドレナリンなど、さまざまな神経伝達物質が正常に分泌されることにより心は常に元気な状態を保つことができます。

 

しかし、強いストレスにさらされると、これらは大量に消費されていきます。

そこで消費された分を補おうと生産を始めるのですが、この時に原材料がないと当然生産量が不足してしまいます。

これが心の病の始まりです。

 

その神経伝達物質の材料になるのが栄養素。

原料のタンパク質、そしてそれらを代謝するために必要なビタミン、ミネラルです。

 

心療内科に来る患者さんの血液検査を行って、その人の栄養状態を調べてみると、99%は「栄養不足」に陥っていることがわかったのです。

本書 P.26

 

なぜこれだけ栄養不足の人が多かったか。それは現代は飽食時代にありながら、栄養のある食べ物が減っているからです。

質の悪い糖質や脂質でカロリーはあるけど、ビタミンやミネラルなどの栄養素が少ない食品、いわゆるエンプティカロリーをとりすぎている。

さらには、野菜に含まれる栄養素も以前と比べて減っているというデータもあります。

実は現代は食べ物だけで必要な栄養素を補うのがとても困難な時代なのです。その結果が大量の栄養不足の人を生んでいます。

 

姫野先生は患者に対してサプリメントなども含めた栄養療法を取り入れたところ、みるみる症状が改善する患者が次々に現れたそうです。

もちろん、薬も併用しながら治療を行うケースもあるそうですが、飲む期間の短縮につながったり、きちんと薬が効果的に効くように変わるというメリットがあるとのことです。

 

たとえば、SSRIという代表的な抗うつ薬は、脳内で足りなくなったセロトニンをリサイクルすることで落ち込みや抑うつ感を取り除く作用があります。

しかし、ただでさえ不足しているセロトニンをリサイクルしたところで、いずれ効果がなくなってしまいます。ここで栄養療法を取り入れると新たに作られるセロトニンが増えるため、相乗効果を発揮するというわけです。

 

実際、僕の知り合いの20代の女性の方も、職場のストレスで毎日お腹を下すようになり、数ヶ月止まらなかったそうですが、ファスティングをしたところピタッと途端に症状が改善されたという人がいました。

心の病気、ストレスは気持ちの持ちようではなく、体に対して栄養的にアプローチすることが大切なのです。

 

日本の未来は食にかかっている

国民が今のままの食事を続けていれば、早晩病気になり、働ける人口は少なくなり、国の経済は崩壊します。

子どもたちが今のままの食事を続けていれば、大人になったとき病気になり、国を支えることができなくなります。

本書 P.211より

 

日本人の食事は危機的な状況にあります。それは現実や事実を知れば知るほど実感します。

心の病が急増しているというのは氷山の一角にすぎません。しかし、一つの現象として現れている事実を見過ごしてはいけません。

 

国は職場のメンタルヘルス対策として、今年の12月から新たにストレスチェックを義務付けるという施策を開始しますが、これも対症療法的と言わざるを得ません。

もちろんやらないよりはやった方がいいのでしょうが、もっと本質的な改革が必要です。

 

それは食の改革です。もっと国民が健康的な食生活を送ることができて、本当に栄養のある食べ物を得ることができる環境づくりをしていかないといけません。

しかし、現実問題で考えると、国にそれを期待するのは儚い願いです。人生は待ってくれませんので、自分たちで学び、考え、行動していくしかありません。

 

姫野先生も、予防医療、未病の重要性を訴えた上でこう記しています。

しかしながら、これが日本の医療のスタンダードになるには、あと20年はかかると思われます。

本書 P.215

 

国、医師、薬だけに頼るのはもうやめましょう。

医師嫌いや薬嫌いになるわけではなく、自分の体は自分が責任を持つべきなのです。

 

今こそ、僕たちは「自分の健康は自分で守る」ということを強く認識し直す必要に迫られています。

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