書評「なにを食べたらいいの?」 安部司

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僕たちの身の回りには、”不自然な食べ物”があふれています。

その代表格が、スーパーやコンビニで売られているふんだんに食品添加物を使った「加工品」です。

 

いろんなところで食品添加物の危険性が指摘され、「体に害だから避けた方がいい」という人もいれば、「きちんと安全性が保証されているから心配する必要はない」という人もいます。

あなたが添加物に対してどのような考え方を持っていても、ぜひ読んでもらいたいのが今回ご紹介するこちらの一冊です。

 

著者の安部司さんは添加物の専門商社で10年間、加工食品の開発に携わっていた方で、食品添加物の危険性を訴えた「食品の裏側」はベストセラーになりました。

 

安部さんはある日、自分の娘さんが夕食に自分が開発したミートボールを美味しそうに食べている姿を見て、ハッとします。

それをおいしそうに食べる家族を目にして呆然としてしまいました。魔法がとけたら低級のくず肉という代物です。本来ならペットフードにしかなりません。

本書 P.17より

 

その翌日、安部さんは会社に辞表を出します。

添加物を売る仕事から、添加物の危険性を訴える仕事へ。そして書かれたのが「食品の裏側」でした。

それを読んだ人たちから「じゃあ一体何を食べたらいいのか」という声が多数寄せられ、その声に応える形で書かれたのが本書です。

 

個人的にはベストセラーになった「食品の裏側」よりも考えさせられ、管理栄養士として胸が熱くなったのが本書です。

早速紹介していきましょう。

 

 

なにを食べたらいいの?

安いものにはワケがある

「安く」作るためには、安く仕入れた質の悪い原料からそれなりの商品を作り上げなければいけません。そのために数種類使用します。たとえばおむすびや弁当のご飯に古米を使うとなると、炊飯用添加物を使わなければふっくらとしません。

本書 P.146より

 

なるべく食費を安く抑えたいと考えている人は多いです。高度成長期を経て、「早い」「安い」「うまい」が良しとされ、技術の進歩も伴い、それらがどんどん追求されてきました。

しかし、普通に考えてみればわかるのですが、世の中安くて良いものなんて限界があるに決まっているのです。

 

安くて簡単便利、美しくてオイシイ食品を国産原料で、野菜であればぜひ無農薬無化学肥料でしかも無添加で作ってくださいというのは、ありえない願いです。

そんな食品がこの世に存在するわけがないのです。

本書 P.151より

 

安く売られているものというのは、当然原価も安いわけです。そして原価が安いのには理由があります。

粗悪な原料を普通に加工すると美味しくならない。じゃあどうするかというと、添加物を使ってオイシくするしかないのです。

 

それに加えて、より簡単に料理するためにあらかじめ煮てある野菜やパックを開けるだけで使えるソース、粉末の出汁のもとなども同様で、添加物の力を借りています。

便利で日持ちをさせるため、見た目をキレイにするため、これらも添加物のおかげさまさまなのです。

 

これだけ大量に添加物が使われるようになったのは誰のせい?

「安さ」「簡単さ」「便利さ」「美しさ」「(濃厚という)オイシサ」を理由に食品を選ぶ消費者は、添加物の被害者ではありません。支持者なのです。

本書 P.151

 

添加物を気にするようになった人が、食品を選ぶ際に裏を見てパッケージを確認するようになるとガクゼンとします。

コンビニやスーパーで売られている加工品には添加物が使われているものしかないのです。僕たちは添加物を使っていない食品を手に入れることがとても困難な環境にいます。

 

しかし、「なぜ企業はこれだけ添加物を使うんだ!」と怒る前に、普段どれだけ添加物の恩恵を受けているのかを知るべきです。

 

たとえば、ポテトサラダ一つにしても、もし無添加で作ったらどうなるのか。

スーパーで買ったポテトサラダ一つ持って帰るのにクーラーボックスが必要になります。さらに、二時間以内に食べなくてはなりません。

もし添加物を排除したら、そういう形でしか売れなくなってしまうのです。

そこまでできる人がどれぐらいいるでしょう。

当たりだと感じていたことは、実は添加物があるおかげで実現できていることもたくさんあるということです。

 

消費者は安くて手軽で簡単に食べられるものを求め、企業はその要望に応える商品を開発し、消費者はそれを喜んで買い、企業が潤い、そのお金でまた消費者が喜ぶ商品を開発する。

そんな流れが来るところまで来てしまったのが今の状態なのです。

 

逆に、真面目に本物の材料を使って、昔ながらの作り方できちんとした食品を作っているところは「高い」「不便」と消費者から嫌われ、商売が成り立たなくなって潰れていっています。

 

添加物を使わないということは、不便さを許容するということ。その事実を直視せずに、頭ごなしに添加物を悪く言う人は被害者でも何でもないと安部さんは鋭く指摘されています。

 

「食」の価値が崩壊している

日本人は安心・安全なんか必要としていない。

暴言に響くでしょうし、みんながみんなそうではありませんが、こうも言ってみたくもなります。安くて簡単、便利でないと選ばないのです。

本書 P.159より

 

僕がこの本を読んで改めて問題だなと感じたのが、「日本人の食の価値が崩壊している」ということです。

 

そもそも、ついこの間までは人間にとって「食」は生きる上でとても大事なものでした。

食べるものを得ることができるかというのは、命を生きながらえさせる上では死活問題だったのです。

 

それこそ、電気がない時代の主婦というのは、毎日かまどで薪を使って火を起こすところから始まっていました。

当然、スーパーもコンビニもありませんので、食事は100%自炊です。

そういった様子を想像してみると、一日の大半の時間を食事の準備や作ることに費やしていたと思います。

 

それが今では24時間、いつでも、お腹が空いたら500円もあればお腹いっぱい食べられるようになってしまったのです。

安くても食べ物が手に入るから、食費はなるべく浮かせよう。

食費よりも服、旅行、ライブ、なんでもいいですが、それ以外のことにお金を使っているのです。

いかに食費を抑えるか、いかに安く済ませるか。

 

伝統的な製法で本物の原料を使って作られた醤油よりも、大量生産で添加物まみれの198円の醤油を手に取る。

完全に「食」に対しての価値が崩壊してしまっているのです。

 

他でもない、自分と自分の家族の「いのち」を作っている食べ物を安く済ませようだとか、高いだとか言っている。

その結果は言うまでもありません。国民の2/3が食べ物が原因の病気で亡くなり、人生最後の10年間を誰かの手を借りないと生きられないのです。

それだけではありません。心の病、子どものアレルギー、ぜんそく、アトピー、その他の病気や体調不良も含めて、引き起こされている問題を挙げれば枚挙にいとまがありません。

 

食べ物はお金と手間がかかるものなんです。当たり前です。

僕たちはそろそろそのことに気づくべきなのです。

 

まとめ

僕はこの本を読んでいて、目頭が熱くなりました。

ただむやみに添加物の危険性を訴えるのではなく、問題の本質に安部さんが触れていたからです。

栄養士は細かい栄養の知識をつけることも大事ですが、それよりももっと大事な自分なりの食に対しての考え方、哲学を持つことが必要です。

この本がきっとそのヒントを与えてくれると思います。

 

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