秋は「新そば」が美味しい季節 そばの歴史と栄養について徹底解説します
こんにちは。
管理栄養士の圓尾(まるお)です。
突然ですが、皆さんは、そばは好きですか?
僕は大好きです。
そばは麺類の中でも随一の栄養価を誇っていて健康に良く、さらにはその歴史や文化も大きな魅力です。
しかもこれから秋が深まると新そばが出てくる時期なので、今から楽しみにしています。
ということで今回は、そばの歴史と栄養について分かりやすくまとめてみたいと思います。
ぜひ、最後までお付き合いください。
秋は「新そば」が美味しい季節 そばの歴史と栄養について徹底解説します
昔はそばを麺としては食べていなかった
日本人とそばの付き合いは非常に古く、いまだにいつどこから伝わってどんなふうに広がっていったのかが判明していません。
しかし、縄文時代の遺跡からもそばの種子が発見されていることから、弥生時代以前の縄文時代にすでに食していたと見られています。
ただ、と言っても縄文人が現代の我々のように丼にお箸で麺をズルズルやっていたわけではありません。
実はいまのようにそばを麺にして食べるようになったのは意外に最近のことで、
それまではそばの実を粒のまま煮炊きしたり、石臼で粉に挽いたものをこねてそばがきにしたり餅のようにして食べていました。
そばはいざという時の救いとなっていた
そばは救荒作物、つまり飢饉を救う作物として重宝されてきました。
それはそばが土地が痩せていても、気候が乾燥していても寒くても育つ丈夫な作物で、かつ50〜70日間という短い期間で収穫できるという特徴を持っているからです。
そのため、他の穀物が収穫できなかったときの備えとして日本人を支えてきた作物です。
織田信長の戦国時代にそばの麺が誕生
さて、ではそんなそばがいつどこで麺類として食べられるようになったのかについてですが、これも実は正確なところは分かっていません。
しかしながら、戦国時代に信州(いまの長野県)に最古の記録が残されていることから、
おそらく長野県で戦国時代頃に生まれ、その後全国に伝わっていったのではないかと考えられています。
ちなみに、中国ではすでに12世紀に麺として食べられていたそう。さすが当時の中国は進んでますね。
もうひとつちなみに、うどんはすでに室町時代には麺として食べられていたようなので、麺としてはそばよりうどんのほうが数百年先輩です。
その後は江戸の街を中心に大人気の食べ物となり、江戸時代の庶民の生活にとってそばは欠かせない存在となりました。
落語の中にもそばが出てくる話がたくさんあります。それぐらい当時の江戸の人にとってそばは生活の一部でした。
当初はこれまで主流だったそばの食べ方と区別するために「そば切り」と呼ばれていましたが、
いつしかそば切りのほうが主流になり、ただ「そば」と言えば麺のそばを指すようになりました。
ちなみに当時のそばは一杯十六文。いまでいう300円ぐらいなので、現代の立ち食いそばと変わらない感覚で気軽に楽しんでいたのでしょう。
なんだかそう考えると、江戸の人を身近に感じますね。
そばと他の麺の違い
さて、そんなそばの栄養ですが、まさに麺類最強です。
それぐらい麺類の中でも栄養が豊富。
というのも、他の麺類(小麦)の場合、ほとんどが小麦を精製された状態で粉にして麺にしているため、どうしても栄養価が低くなります。
※ ちなみに探すと全粒粉で作ったパスタやうどんも見つかりますが、外食などでは一般的ではありません。
しかし、そばの場合は基本的に小麦でいうところの全粒粉と同じような、精製していない状態で粉にして麺にしているものが多いのです。
※ ただし、更科そばに代表されるような色が白くて味わいもスッキリしているものは、一番粉といって精製小麦に状態が近いため、栄養価は下がります。
ただ、そばの場合はつなぎとして小麦粉を加えることが多いので、当然その分だけまた栄養価は下がってしまいます。
特にチェーン店の中には小麦粉8割、そば粉2割という、”逆二八そば“なんていうのもあるというから要注意です。
一番良いのはそば粉だけを使った”十割そば“や、挽きぐるみといって、そばの実を精製せずに(お米でいうと玄米ごと挽いて粉にした)粉にしたそば粉を使った”田舎そば“が栄養価が高いです。
独特のそばらしい香り、素朴な味わいが楽しめるのも良い点です。
それに対してスッキリした更科そばは喉越しを楽しむような食べ方がされています。
これもまたこれで美味しいのですよね。
そばの栄養
そんなそばの栄養ですが、他の麺類のうどんやそうめん、ラーメン、パスタなどと比べてみてもやはり優れています。
マグネシウム、鉄分などの不足しがちなミネラルの含有量も多いですし、食物繊維も豊富です。
昔からこのことは知られていたようで、そばは「五臓の停滞物を除く」とされ、そこから旧年の穢れを取り払う年越しそばへとつながっていきます。
さらには糖質を代謝するビタミンB1も多く、そばに含まれる糖質を分解する成分まで一緒にとることができます。
ちなみに、ねぎに含まれるアリシンという成分は、このビタミンB1の働きを強める働きがあるため、薬味として一緒に食べるのは非常に理にかなった食べ方です。
さらには別名ビタミンPとも呼ばれるルチンという成分が含まれています。
このルチンには血管を丈夫にし、血流の改善や血圧を下げるなど、生活習慣病に関してさまざまな効果が分かっています。
このように、そばには糖質やたんぱく質に加えていろいろな栄養素が豊富に含まれているのです。
秋は新そばの季節
そして一年に一度、秋そばとして出回るのが新そばです。
この新そばはそばの中でも色、味、香りとどれをとっても最高とされています。まさに秋はそばの季節です。
そばの収穫は北海道で九月中旬ごろにはじまり、徐々に南下、九州では十一月中旬ごろに行われるようです。
これだけ深い歴史と文化があり、体にとっても優しく、手軽に食べられるそばをぜひこの秋に堪能してみてくださいね。