世界で最古のバイオビジネスは日本発祥だった!「アスペルギルス・オリゼー」はなぜ国菌になったのか

 

皆さん、昨日発酵食品をとりましたか?

 

「発酵食品?納豆は食べていないしな〜」

いえ、よ〜く考えてみてください

 

発酵食品は納豆や漬物だけではありません。

日本酒だって発酵食品ですし、醤油、味噌、酢などの調味料も発酵食品です。

 

出汁をひくための鰹節だって、種類によっては(枯れ節)発酵食品になります。

日本では発酵食品抜きで一日過ごすことの方が難しいぐらい、僕たちの食生活は発酵で成り立っているのです。

 

日本の発酵食品の多様性は世界一とも称されますが、

その中でも極めつけなのが”国菌“の存在です。

 

国菌とは、国を代表する菌のことで、

日本を代表する国花が桜、国鳥が雉(きじ)という並びで、日本では国菌が存在します。

 

それが、アスペルギルス・オリゼーという菌です。

世界でも国を代表する菌なんてものが存在する奇異な国は日本しかありません。

 

「でも、国菌ってどういうこと?」

今回の記事では、日本の国菌に認定されたアスペルギルス・オリゼーについて書いてみたいと思います。

 

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世界で最古のバイオビジネスは日本で起きていた!「アスペルギルス・オリゼー」はなぜ国菌になったのか

見えないけどスゴイやつ!麹菌

「アスペルギルス・オリゼー」というと難しい微生物の授業のように聞こえますが、

和名で「麹菌(こうじきん)」とも呼ばれている菌のことです。

 

「麹(こうじ)」は聞いたことがありますよね?

なんとなく、味噌や醤油に関係するものというイメージがあるのではないかと思います。

 

この麹は、「」とも書き、この糀は日本人が作った漢字です。

 

「米」に「花」と書いて糀。

糀とは、表面にカビを繁殖させたお米のことです。

 

ちなみに、麹には麦の表面にカビを生やしたものや、豆の表面にカビを生やしたものがあり、

米にカビを生やせた麹を特に「糀」と表現しています。

 

さて、実はこの糀(米麹・こめこうじ)の表面に生えているカビこそ、麹菌、つまりアスペルギルス・オリゼーなのです

 

なぜ発酵食品には麹が使われる?

日本酒を作る時にも、味噌や醤油を作る時にも麹は使われます。

麹の働きは、食べものの中の栄養素を細かく分解すること

 

たとえば、日本酒ではお米のデンプンを麹菌がグルコースという細かい糖類に分解します

そしてそこから今度は酵母という別の菌がグルコースをアルコールに変えるという二段階の工程を踏んでお酒ができています。

 

このように、麹にはデンプンを細かい糖類に、たんぱく質を細かいアミノ酸に分解する力があります。

この力を利用したのが発酵食品なのです。

 

世界最古のバイオビジネスは日本の室町時代にあった!

ここから表題の話に入っていきます。

 

日本では古くから発酵食品が作られて売られており、

この発酵食品を作る上で欠かせない麹菌を専門に製造・販売する会社がすでに十三世紀初頭の室町時代からあったことが書物から明らかになっています。

 

このスゴさ、わかりますか?

にわかには信じられないことです。

 

十三世紀初頭といえば、日本はおろか、世界中でまだ誰も微生物の存在が知られていない時代です。

 

微生物研究の祖と言われるフランスのパスツールやドイツのコッホはいずれも十九世紀の人たちです。

 

目に見えない、存在すらわからない。

そんなものを作って生業(なりわい)にしていた人たちがいたということに驚きを隠せません。

 

しかも、この室町時代に創業した種麹屋(たねこうじや)は今日でも10社が続いているとのことです。

 

「国菌」の意味とは?

日本の発酵食品づくりに広く使われてきた麹菌(アスペルギルス・オリゼー)が国菌に登録されたのは、2006年のこと。

日本醸造学会にて認定されました。

 

この麹菌には、国菌に登録されるだけの理由があります。

その一つが、今ある麹菌は日本人によって改良された菌だということです。

 

野菜でも京野菜に代表されるような”その地域でしか栽培できない品種“というものがありますが、

麹菌もそれと同じなのです。

 

麹菌のDNAを調べたところ、フラブスという野生菌種を“家畜化”した菌だということがわかりました。

“家畜化”とはどういうことかというと、人間が使いやすいように特性が変わっているということです。

 

たとえば、フラブスという麹菌の親になっている菌は人間を殺してしまうぐらい強力なカビ毒をつくる品種です。

それが、麹菌(アスペルギルス・オリゼー)では、毒を作る遺伝子がなくなってしまっています

 

他にも、デンプンを糖に分解する酵素の遺伝子がフラブスでは一つしかないのに対して、オリゼーでは三つもあります

このように、麹菌はより人間に対して安全で、かつデンプンを分解する能力が上がっているのです。

 

これはおそらく、日本の種麹屋が品質の良い麹菌同士をかけ合わせたり選別していく中で自然と都合の良い菌が出来上がっていったのだと考えられています。

まさに、日本人の長年における観察力と努力の賜物が、このアスペルギルス・オリゼーなのです。

 

まとめ

ということで、今回は日本の国菌であるアスペルギルス・オリゼーについてまとめてみました。

この話、ちょっと鳥肌モノですよね……。

 

ぜひ、次に醤油や味噌、日本酒を味わう時にはこのアスペルギルス・オリゼーの話を思い浮かべながら食べてみてください。

きっとこれまで味わったことのない深いレベルの美味しさを感じられるはずですよ。

(参考: 「和食とうま味のミステリー」 – 北本勝ひこ

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