書評 「食生活が人生を変える」東城百合子
「病気になったら病院に行ってお医者さんに診てもらう」
現代の日本では常識のようになっている考え方ですが、実際に病院に行けば病気が治るものなのでしょうか。
僕は管理栄養士として病院で働いていました。
しかも日本の首都東京にある、それなりに大きな病院で、勤務する医師も一流の大学を出たエリートの方が多くいました。
そこでの経験や、いろいろと勉強していて思ったのは「なるべく病院には行きたくない」ということです。
僕は何も完全に現代医療を否定しているわけではありません。
医療の進歩は偉大で、僕たちはその恩恵を多大に受けています。
昔は不治の病とされていた病気が治る薬が発明されたり、交通事故等で昔なら手の施しようがないような重症を負っても一命を取りとめることが可能になったことは素晴らしいことです。
しかし、同時に忘れてはならないのは、医療は万能ではないということ。
現代医学を持ってしても、治せない病気は山ほどあります。それでも「病院に行けばなんとかしてくれるはずだ」という考えを持って病院に通い続ける人が多くいます。
そんな人にぜひ読んで欲しいのが今回紹介するこちらの一冊。
それでは、紹介していきましょう。
食生活が人生を変える
日本人が古来より培ってきた自然の知恵が集結
この本の著者の東城さんは二十代の時に肺結核で生死の境をさまよい、死にかけるという経験をします。
栄養士免許も持っていた東城さんは、当時学んだ栄養学に従い、しっかり栄養をつけようと無理してバターや卵、肉を食べますが、病気は悪化の一途をたどるばかり。
そんな時に医者の兄の友人から受けた助言をもとに”自然療法“に大転換し、それが奏効し、死の病から蘇ることができました。
この本には日本人が昔から親しんできたいろいろな食材を、ただ食べるだけに限らず、湯に煎じたり、お風呂に入れたり、温めて湿布のかわりにしたりといった活用法が紹介されています。
細かい症状別にどの食材をどう加工してどう使うのかといったことが詳細に記されており、一体どうやってこのような処方箋を編み出したのだろうと思わず目を疑います。
まるで、田舎のおばあちゃんから直接知恵袋の話を聞いているみたいな感覚になりました。
すべての病気は心(考え方)から始まっている
病気、不幸は根(心)があって枝葉に出てきた現象にすぎません。でも、私達はその出てきた枝葉である病気、不幸を何とかしようとあせる。
P3より
特に共感したのが東城さんのこの考え方です。
熱が出たから、解熱剤を飲む。
血糖値が高いから血糖降下剤を飲む。
ガンができたからガンを放射線で焼き殺す。
これこそ、まさに現代医療の問題点、弱点で、見えている症状に個別にアプローチすることに終始し、何がその病気を引き起こしているのかという原因を考察したりアプローチすることをしません。
しかし、物事の結果には必ずそれを作り出した原因があるはずです。
その原因にアプローチしない限り、また症状が再燃したり、他の不具合を産む結果につながってしまいます。
その原因の大きな要因が普段の食生活。僕たちは食べたもので作られているからです。
そして、東城さんはさらに深く問題の本質をズバリと指摘します。
今の世の中は、こうした自然療法の考えかたとは大きく異なり、ラクをして手っ取り早く健康になりたい人であふれています。
P.22より
「健康ではいたい。でも、そのために時間やお金や労力はなるべくかけたくない」
そういう考えを持った人が本当に多いように感じます。
テレビ番組でも雑誌でもインターネットでも、「●●するだけでスグに✕✕できる!」といったような情報が頻繁に発信されています。
それはとりもなおさず、視聴者がそういった情報を求めているからです。
しかし、そういう考え方を持っている限り、なかなか健康になれないことに気づいている人は少数です。
健康という森全体を見つめる視点を持たない限り、ずっと木や、下手をすると枝の部分ばかりを見ていては本当の健康を手に入れることは難しいのです。
まとめ
僕がファスティングの活動をしていて感じることが二つあります。
一つはいかに日本人の頭が西洋医療的な考えでガチガチに固くなっているかということ。
「断食」「食べない」というイメージだけで「辛そう」「栄養がとれないから健康になれるはずがない」といったように思考停止する人がたくさんいます。
ちょっと一般常識と違うような印象のあることには途端に門戸を閉ざしてしまう傾向があるのです。
しかし、常識だと思っていることを盲信する姿勢は、その常識が間違っていた時に良くない結果を生み出してしまいます。
もう一つは、特に男性のファスティングのお客さんの傾向には特徴があるということです。
どういう人が多いかというと、経営者や個人事業主、仕事のできるサラリーマンの方です。
これはまさに東城さんのお話どおり、そういった方たちは自分の仕事のパフォーマンスが体のコンディションによって大きく左右されるということを認識しており、そのコンディションを保つために人一倍労力を惜しまないのです。
だからこそ、仕事で卓越した結果を生み出すことができるのですが、仕事のできない人はこの順序が逆になっています。
「忙しいから健康に気を使う隙がない」
「時間ができたら運動を始めよう」
「収入が増えたらきちんとした食事にお金を使おう」
彼らはそう言います。しかし、その考えではいつまでたっても時間もお金もできません。
仕事の結果を生み出すこの体という最大の資本の価値を最大化することが何よりも先決なのです。
つまり、自分の体を大切にしていないからこそ、仕事でも結果が出ないということです。
考え方が現実を作っていく。
この本は、改めて健康、そしてそれを作っていくための食について気づきを得る一冊になることと思います。
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