【書評】野菜は小さい方を選びなさい 岡本よりたか

こんにちは。管理栄養士の圓尾です。

(初めての方はこちらからどうぞ

 

thumb_IMG_3659_1024

 

僕たち栄養士はじめ、健康を伝える立場の人が口を揃えて言うことがあります。

 

野菜を食べましょう

 

でも、その野菜がどのように作られたのかを知ることの重要性まで合わせて伝える人は多くありません。

 

今回ご紹介するこの本は、

四十代から自然農法を始められ、自然農法の普及活動などで幅広く活躍されている岡本よりたかさんが書かれた新刊です。

 

 

タイトルから想像できる以上の有用な知識と、経験に裏打ちされた豊富な知見が散りばめられた一冊。

早速紹介していきましょう。

 

 

野菜は小さい方を選びなさい

 

日本で栽培される農産物の99%以上は、農薬や化学肥料を使った農業によって生産されています。

 

頻繁に耳にする「有機栽培」と「自然栽培」の違いは、

自然農法はいかなる農薬も肥料も使わず、除草すらもしないという農法です。

 

「え?そんなんで野菜が育てられるの?」と驚くかもしれませんが、

そんな既成概念は、この本を読むことでひっくり返ることでしょう。

 

肥料を与えるから農薬が必要になる

肥料がないと育たないというのは単なる思い込みでしかありません。

(P. 22)

 

「農薬は良くない」という認識はほとんどの人が持っていると思いますが、

実は肥料を使うことがその引き金になっていると岡本さんは指摘します。

 

どういうことかというと、

肥料を与えると、野菜が過栄養になります。

 

そうなると、たくさんの虫が寄ってきやすくなるので、その害を防ぐために農薬が必要になるのです。

 

 

そして農薬をまくと、野菜を病気から守ってくれている微生物が死滅し、野菜が病気にかかりやすくなります

 

また、肥料を与えると、土の中の微生物もいなくなります

 

これは、微生物というのは、土の中の有機物を細かい物質に分解するという働きを持っているのですが、

最初から細かく分解されている状態の化学肥料をまくと、その仕事がなくなってしまい、いなくなってしまうからです。

 

そうなると、野菜が必要な栄養素が土の中でできなくなるので、さらに肥料をまくという悪循環になります。

 

このように、肥料を与えることで自然の営みの胃歯車が次々に狂っていきます。

 

 

さらに、たとえ有機肥料であっても与え過ぎると野菜が窒素を溜め込んでしまい、

これが苦味やエグ味の原因となって野菜の味まで落ちてしまいます

 

 

有機野菜は必ずしも安全なわけではない

実は、この有機栽培農産物のなかにも、化学薬品を使ったものもありますし、みなさんが思うほど手をかけて安全に作ったとも限らない場合もあります。

(P. 53)

 

JAS認定の有機栽培のマークを見ると、なんとなく「これは安全」と思ってはいないでしょうか。

 

しかし、有機栽培も万能ではありません

 

まず第一に、有機栽培は無農薬栽培ではありません

実に、三十七種類もの農薬の使用が認められているのです。

 

そして、有機肥料の問題。

 

有機肥料には家畜排泄物などの動物性のものと、

残飯や枯れ葉、糠や油粕などの植物性のものがあります。

 

家畜排泄物は、その家畜がどんな育てられ方をしたのかがわかりません。

 

その過程で抗生物質やワクチンなどが投与されている可能性もあります。

 

植物性のものも、残飯の中には食品添加物などが混入しているかもしれません。

 

通常は、肥料として使用する前に発酵させるため、化学物質は分解されるようですが、

中には十分な発酵を経ていないものもあるようなので、肥料を通じて土が汚染され、野菜も汚染される可能性は否定できません

 

 

世界の胃袋が支配される 遺伝子組み換え作物

僕はこの遺伝子組み換え作物については非常に危惧しているので、少し詳細に書いておこうと思います。

その理由は多々ありますが、最大の理由は、遺伝子組み換え作物は、種を 保存することが違法となるからです。

(P. 83)

 

遺伝子組み換え作物の問題はあまり知られていませんが、大きな問題です。

 

遺伝子組み換え作物は種自体に特許を持っているため、

一度使いはじめると永久にその会社から種を買い続けなくてはなりません

 

遺伝子組み換え作物は大豆やとうもろこしなど、

家畜のエサになったり主食になるものが多くあります。

 

つまり、これからどんどん遺伝子組み換え作物が世界中に広がっていくと、

その遺伝子組み換え作物の種子を作っている会社の気持ち一つで、世界の食糧自給が影響を受けることになるのです。

 

 

また、安全性に関しても判然としない部分があります。

 

現在、遺伝子組み換え作物の安全性はラットでの九十日間の実験による短期毒性に関してしか確かめられていません

 

しかし、いくつかの研究によって、遺伝子組み換え作物には三つの健康被害の可能性が指摘されています。

 

すなわち、「腫瘍(がん)」「アレルギー」「不妊」です。

 

遺伝子組み換え作物が大量に消費され始めた時期と、これらの症状が急激に増え始めた時期が見事に符合するのは、偶然で片付けられるものではないように思います。

 

 

こんな状況の中で一体どうすれば良いのか

残念ながら、本書で語られている”真実”を知ると、

スーパーで日常的に手に入る野菜はほとんどが本来の野菜ではないことに気付きます。

 

本書で岡本さんは、そんな中でもできる行動として、いくつかの提案をされています。

 

まず一つ目が、野菜を見極める目を養うこと。

本書の中では、野菜の品目別に良い野菜の見分け方が詳しく紹介されています。

 

 

二つ目が、生産者と直接繋がること

いかなる表示も、あくまで参考にしかなりません。

 

それよりも確実なことは、どんな人がどんな思いで野菜を育てているのかを知ること。

これに勝るものはありません。

 

 

最後が、自分で野菜を育てることです。

 

家庭菜園や畑を借りて自分で野菜を育てることで気付くことがたくさんあると岡本さんは話します。

 

具体的な土の作り方から育て方まで、本書ではこれも詳しく書かれているので、

自家栽培に挑戦する時に大いに参考になります。

 

 

栄養士の必須科目に農業に関する項目を入れるべき

普通に大学で栄養学の勉強をし、栄養士になった人にとっては、

一本のにんじんはどれも一本のにんじんとして認識されます。

 

どの季節に、どこで、誰が、どんなふうに作ろうと、

食品成分表上では、一本のにんじんは同じにんじんとして栄養価が計算されるのです。

 

 

しかし、当然それは同じにんじんであるわけがありません。

大学で教えられる栄養学にはこの違いについてまったく教えられていません。

 

なので、

大学を出た管理栄養士はそんなことはまったく意識せずに人々に栄養のことを伝えたり、助言を与えているのが現状なのです。

 

僕も、ある時点までは、

「有機って、なんかちょっと高いけど、良いらしいよね」

ぐらいにしか考えていませんでした。

 

大半の栄養士がその程度だと思います。

 

これでは、本当の意味で人々を健康にすることはできません。

栄養士たるもの、最低限の農業の知識は持っておくべきだと、強く感じます。

 

【 こんな記事も読まれています 】

※ 書評 「不自然な食べものはいらない」 内海聡・野口勲・岡本よりたか

※ 漬物=発酵食品ではない? スーパーのニセ漬物を見抜く方法

※ 管理栄養士の僕が普段の食生活でしている工夫 その二

※ 書評『だから、僕は農家をスターにする』高橋博之

※ 思わず言葉がこぼれる美味しさ!「大地を守る会」の牛乳の特徴は?

ファスティングサポート
おすすめ酵素ドリンク
食生活相談所

スポンサー